環境省生物多様性センターでは、自然環境保全基礎調査の一環として、「全国鳥類繁殖分布調査」を実施してきています。今般、2016年から2021年にかけて約20年ぶりに実施した調査の結果を取りまとめました。
今回の調査は、新たな試みとして、NPO、NGO及び研究者等と共同運営し、市民等のボランティア2,106人の参加者の協力の下、全国の2,344地点で調査を行い、379種の鳥類の情報を記録しました。
そのうち、一部の絶滅危惧種を除き、278種(+3亜種)について繁殖分布図を作成しました。
また、過去2回の調査と結果を比較することで、レッドリスト掲載種の分布の変化や外来鳥や樹林性の鳥の分布拡大、農地など開けた場所のスズメやツバメといった身近な鳥の減少などの変化が明らかになりました。調査で得られた結果は、生物多様性保全施策や環境アセスメント等における重要な基礎資料として活用が期待されるものです。

1.調査概要

全国鳥類繁殖分布調査は、自然環境保全基礎調査の一環として、1974-1978年調査(以下「1970年代調査」という。)及び1997-2002年調査(以下「1990年代調査」という。)において、計2回実施しています。3回目である2016-2021年調査(以下「2010年代調査」という。)は、国内で繁殖する鳥類について、現在の分布状況を明らかにするとともに、過去の調査結果との比較により、繁殖鳥類の分布変化を把握するために行ったものです。本調査は、環境省生物多様性センターと、野鳥観察者や研究者とのネットワークを持つ5団体からなる「鳥類繁殖分布調査会」が共催し、2,106人のボランティアの方々の参加を得て実施しました。

<鳥類繁殖分布調査会>

特定非営利活動法人バードリサーチ(事務局)、公益財団法人日本野鳥の会、公益財団法人日本自然保護協会、日本鳥類標識協会、公益財団法人山階鳥類研究所及び環境省生物多様性センター

現地調査は、全国に設置した2,344地点で実施しました。また、アンケート調査や他の調査で得られた情報の収集も行い、専門家ヒアリングを踏まえ、繁殖分布図を作成しました。

2.繁殖分布図について

得られた調査データに基づき、分布状況と繁殖ランク(ヒナの世話や求愛など、繁殖行動が見られたかどうかをランク付けしたもの)を地図に示した「繁殖分布図」を、種ごとに作成しました。繁殖分布図では、収集したデータを、約20km四方のメッシュごとに集計し、各メッシュにおける繁殖ランクを色分けして表しています。分布状況と繁殖ランクの時間変化が分かるよう、繁殖分布図には、1970年代調査及び1990年代調査の図も掲載しました。また、1990年代調査との比較に当たっては、現地調査の調査コースの変更度合いが25%未満で、かつ、1990年代調査とおおむね同じ方法で調査を行うことができた1,947地点を対象としました。あわせて、繁殖分布図には、種ごとに分布の変化や生態的特徴について記載しています(別紙「繁殖分布図の例」参照)。

3.主な調査結果

1990年代調査及び2010年代調査を比較し、記録された調査地点数(以下「記録地点数」という。)及び、観察された個体数(以下「総個体数」という。)の変化が大きい15種を明らかにしました。

(別紙「1990年代調査からの増減15種」参照)

(1)環境省レッドリスト掲載種

・ 環境省レッドリスト2020掲載種のうち、ヤイロチョウ、オジロワシ、サンショウクイ等では、メッシュ数及び現地調査の記録地点数が増加しました。

・ 一方、シマアオジ、アカモズ、コアジサシ等はメッシュ数及び現地調査の記録地点 数が減少しました。

(別紙「レッドリスト掲載種の分布変化」参照)

(2)増加した種

<外来鳥>

・ ガビチョウやソウシチョウを始めとした、外来鳥の記録地点数や総個体数が顕著に増加しました(別紙「1990年代調査からの増減15種」参照)。

・ ガビチョウは、積雪量の少ない地域を中心に分布が拡がり、1990年代調査と比較すると、より広範囲で見られるようになりました(別紙「増加した種」参照)。

<樹林性の種>

・ 1990年代調査から、記録地点数や総個体数が増加した種の多くは、サンショウクイやキビタキなど、樹林に生息する鳥類でした(別紙「1990年代調査からの増減15種」参照)。

・ 生息環境が多様で、食物も類似しているホオジロの仲間について、生息環境と分布の変化の関係性を見たところ、樹林性の種であるクロジやミヤマホオジロは分布が拡大し、湿地性の種であるシマアオジやオオジュリンは縮小していました(別紙「増加した種」参照)。

(3)減少した種

<開けた場所の種>

・ アマサギ、ツバメ、ムクドリ、スズメなど、農地など開けた場所を利用する種の総個体数が減少していました(別紙「1990年代調査からの増減15種」参照)。

・ ツバメ及びスズメでは、1990年代調査時の農地の割合が高い場所ほど、個体数の減少幅が大きいという傾向がありました(別紙「減少した種」参照)。

4.調査結果の公開について

本調査の結果は、報告書として「全国鳥類繁殖分布調査報告日本の鳥の今を描こう 2016-2021 年」(鳥類繁殖分布調査会2021)にまとめられており、以下のWebサイトで閲覧・ダウンロードできます。

 【全国鳥類繁殖分布調査Webサイト】 https://bird-atlas.jp/pub.html 

また、調査データは、環境省生物多様性センターのWebサイト「いきものログ」で閲覧・ダウンロードすることができます。

 【いきものログWebサイト】 

https://ikilog.biodic.go.jp/Investigation?invReq=detail&eventremarks_id=279&group_id=1

【添付資料】

【詳細】
ホーム > 報道・広報 > 報道発表資料 > 自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)について
https://www.env.go.jp/press/110125.html